乳牛のエサの種類と食事量

乳牛はいつも何を食べているのか?

 

 毎日365日、我々人間に飲料乳をはじめチーズ・バター・アイスクリームなどの加工乳製品の原料となる生乳(通称:牛乳)を提供してくれている乳牛さんたち。そんな乳牛たちは、「毎日一体何を食べているのか?」という事が、皆様気になったことはございませんか?
 乳牛は、皆様ご存知の様に、草食動物なので「牧草」を主食としています。しばしばテレビなどで、牧場に放牧されて呑気に場内に生えている草を食んでいる姿を見かけることがあると思います。広い場所で大好きな草を食べているのは、乳牛にとっては、最高の贅沢であり、我々に与えてくれている美味しい牛乳が出来る要因の一つとなっているのは確かです。しかし乳牛が、美味しく大量牛乳を産出には、牧草だけでは足りません。
 我々人間も、主食・副食などをバランス良く、毎日一日三食を採る様に(給餌方法は各々の酪農農家さんに拠って違う場合がありますが)、乳牛も牧草(主食)や穀物飼料(副食)をその時の乳量や体調に基づき、飼料が給餌されています。

 

 今回は、乳牛が食べる飼料の一部を紹介してゆきたいと思います。

 

乳牛の主食は牧草

 

 先程も申しましたが、乳牛の主食は、『牧草』です。後程、穀物系飼料(副食)の方も紹介しますが、やはりこの主食である牧草を抜かしては、乳牛は生きてゆけません。これは乳牛に関わらず肉牛、ひいては羊などにも当てはまることであります。筆者も牧場に働き始めたての頃は、諸先輩や獣医さんに、牧草の重要さを叩き込まれたものです。 牧草を与えることが、一にも二にも重要不可欠であるかと簡単に申しますと、「乳牛の身体・骨組みの基礎を造る役割」「4つの胃袋、特に第一胃を強化させる役割」を担っているからです。
 固く消化が遅い上、繊維質たっぷりの牧草をムシャムシャと咀嚼することで、強く丈夫な胃袋や骨格がうまれるのです。これは人間にも同じことが言えることです。余談ですが、江戸幕府を開いた徳川家康(1542〜1616)の健康マニアは昨今有名ですが、彼の主食は消化の良い白米ではなく、食物繊維質たっぷりの固い麦飯を主食として、彼の長生きの秘訣の1つとして語られています。

 

 牧草に話を戻します。牧草を食べる事に拠って丈夫な骨格および胃袋ができる乳牛ですが、草なら何でも良いというのでは決してありません。「牧草(ボクソウ)と呼ばれる、飼料専用の草」を与えられます。牧草も先祖を辿れば山地の奥などの自然界に生息していた生草であったのを、人間が飼料用として品種改良したのが始まりと言われていますが、現在では酪農界では、絶対必要不可欠の存在であります。
 乳牛に与えられる主食は、主に3分割として利用されます。それらは以下の通りです。

 

@青草:名前の通り、刈りたての生草状態の牧草です。先程述べた、放牧場で牛が食べている牧草はこの分類に入ります。生草なので、新鮮で水分が多く含まれ、栄養価の高く、乳牛も好物なので喜んで食べます。しかし飽くまでもナマの草なので、変質し易く、特にカビが生えやすいので、保存期間が短いという欠点もあります。青草は、乳牛が放牧されている時の余暇に食べているというのが主流です。

 

A乾草:こちらも名前の通りですが、刈った牧草を乾草させた状態です。乾草させてあるので、保存期間が@の青草に比べると格段に長くなっています。また草内に含まれる水分を落とすことに拠って、ビタミン・ミネラルの成分比率を高めたり、(生草より固くなっているので)唾液の分泌を盛んにし、胃での繊維分解の促進を行います。乾草の欠点としては、牧草の質が悪い状態であると、選り食いしたり、乳牛が食べなかったりします。また湿気の多い梅雨・雨季時期には、乾燥させてある分、空気中の水分を吸収してしまい、カビが生えてしまう確率が高くなるという弱点も持っています。

 

Bサイレージ:サイレージとは少し聞きなれないかもしれませんが、一言で申せば、「乳酸発酵させた牧草」です。原料は、主に生草や家畜用トウモロコシが利用されます。人間の食べ物では漬物に近い飼料と言えるかもしれません。サイレージ(silage)は英語ですが、語源はスペイン語の「エンシレージ(ensilage) 意味:サイロ(silo)に貯蔵する牧草」であると言われています。サイロは食糧貯蔵庫という意味です。
 先にサイレージは乳酸発酵させた牧草と申しましたが、乳酸発酵させることに拠って、良い匂い(ヨーグルトの美味しそうな匂いです)を放ち、乳牛の食欲増進を助ける上に、乳酸菌などの有機酸が豊富に含まれるので、乳牛の肥育にも大いに役立ちます。乳酸菌(嫌気菌)で発酵させることにより、カビ(好気菌)の繁殖を抑えるので、保存方面でも優れています。この様に、大きな利点があるので、現在の大幅の酪農家さん達は、サイレージを加工し牛たちに給与しています。
 しかしサイレージにも欠点がありまして、とにかくサイレージ加工が難しいです。乳酸菌は空気を嫌いますので(嫌気菌)、密閉具合や発酵方法を間違うと、カビなどが生え(好気菌)、質が悪いサイレージとなってしまいます。また牧草を刈る適時に収穫したいと、牧草の品質低下にも繋がる上、いざ作業開始となると、刈りだし・粉砕をした上、密閉されたサイロ塔や倉庫へ搬入するという加工には、重労働が必要です。現在では機械化が進み、刈った牧草を特殊ラップで完全包装しロールにするサイレージが主流となっていますが、今でもサイレージ加工は重労働の1つであることは確かです。
 筆者のサイレージ加工の思い出として、高校時代に、サイロ塔に(高所恐怖症を覚えつつ)登り、刈りだした牧草やトウモロコシを入れたり、牧草を踏んで均す作業をしましたが、塔内は密閉されているので蒸し暑く、酷い思いをしたことが強烈に残っています。因みに、サイロ塔は、飼料貯蔵のため敢えて密閉し気密性が高く、風通しが悪いですが、それが転じて情報伝達などが悪く、風通しが不良な組織を「サイロ型組織」と、ニュースや新聞などで比喩されるようになりました。

(サイロ塔の一例)
古来ヨーロッパからはじまり、食糧や飼料の貯蔵として人々に利用させてきましたが、塔内でのサイレージ加工作業が重労働であるのもあり、また貯蔵方法などが発達してきたので、現在ではあまり利用されなくなってきています。

 


(ロールサイレージの一例)
サイロ塔に代わり、現在は、この様にサイレージが密閉加工、そして貯蔵されます。ロール状に圧縮加工されていますので、運搬も比較的に用意です。軽い物でしたら、人力で地面で転がしながら運べたりします。 

沢山ある牧草の種類

 先程まで、乳牛の主食である牧草が、青草・乾草・サイレージに3分割され給餌される事を述べましたが、それらの原料となる牧草がなければ、乳牛を賄うことはできません。一言で牧草と言っても、その植物の歴史や種類がどれほどあるのか?
 筆者も改めて気になりましたので、少し調べてみました。主に日本の牧草の歴史は明治時代初期に輸入されることで始まり、種類に至っては、牧場に長年勤めていた自分も言うのも恥ずかしいのですが、「こんなに牧草の種類が沢山あるのか!」と感じている次第でございます。

 

 此方ではイネ科牧草・マメ科牧草の種類の一部を紹介してゆきたいと思います。

 

1.イネ科牧草:我々日本人は、稲(ご飯)を主食としていますが、乳牛も同様で主食中の主食の牧草は、このイネ科牧草植物です。栄養バランスが良く、嗜好性にも優れていますので牧草の王者と言っても過言ではないでしょう。

 

@チモシー(別名:オオアワガエリ 原産:ヨーロッパ)
 日本をはじめ米国中心に世界各国で栽培され、イネ科牧草のメイン中のメインの牧草です。筆者の勤務していた牧場でも、このチモシー乾草を買い入れ、乳牛や馬に給餌していました。優れた牧草であるが上に、酪農家さん達に人気があり、毎年買値が上昇している高価な牧草でもあります。ウサギなど小動物のエサとしても利用されています。

     (チモシー)

 

Aケンタッキーブルーグラス(原産:ヨーロッパ)
 寒冷の耐性に非常に優れているので、乾燥地帯を除く世界各国で栽培されいます。乳牛の嗜好性が良い上、放牧地に適している牧草でもあります。放牧地に強い特性を生かして、ガーデニング芝用としても利用されているのは有名です。

   (ケンタッキーブルーグラス)

 

Bイタリアンライグラス(別名:ネズミムギ 原産:イタリア)
 名前の通り、イタリア原産の牧草です。地中海をのぞむ温暖な気候の国の牧草らしく、温暖な国々で栽培されいます。西日本でも水田の裏作として栽培されることもあります。他のイネ科牧草に比べ生長が早く、早い時期に収穫できるので重宝されている牧草の1つです。

  (イタリアンライグラス)

 

Cオチャードグラス(別名:カモガヤ 原産:ヨーロッパ)
 チモシーと並んで、牧草の主力の1つとなっています。日本の気候に合っているようで広く栽培されていますが、特に北海道・東北地方といった夏でも涼しい地域で栽培が適しています。オチャードグラス単一では収穫量が、他の牧草に比べ少量なので、他の牧草と混成栽培するのが主流となっています。

  (オチャードグラス)

 

 日本では、上記の4種類のイネ科牧草が乳牛の主食となり栽培されていますが、他にもトールフェスク、バヒアグラスなど言ったイネ科牧草が日本をはじめ世界各国で栽培されている品種も多々あります。

 

 2.マメ科牧草

 

 牧草には、マメ科もあります。前出のイネ科牧草に比べ、タンパク質・カルシウム・マグネシウムが豊富に含まれており、イネ科牧草と共に、乳牛の主食の一翼を担っています。また、牧草を含めるマメ科植物内には、根粒菌という細菌が共存しており、空気中の窒素を草地(土地)に固定するので、窒素分の肥料が少量で済み生命力が強い上、土地の質を改良してくれるという利点もあります。その利点を生かして、田畑や果樹園などの土地改良のため、マメ科植物(牧草)を植えることもあります。
 しかし、マメ科牧草は、栄養分が高い牧草のため、一度に乳牛に多量に給餌すると下痢をしてしまう事があるので、イネ科牧草に少量を混合して給餌するのが主流となっています。

 

@アルファアルファ(別名:紫馬肥やし 原産:中央アジア)
 マメ科牧草の代表的なひとつです。「牧草の女王」と謳われているくらい人気のある牧草です。乾草状態で給餌するのが主流ですが、固形状飼料(ペレット)に加工する場合もあります。スプラウト(芽だし)ではサラダの材料にも使われたりします。
 筆者が勤務していた牧場でも、アルファアルファを買い入れおりました。乗用馬を中心に給餌しており、乳牛にもイネ科のチモシーに混ぜて給餌していました。乳牛にも貴重な牧草の1つですが、それ以上に馬の飼葉として重宝されているのが現実です。日本名の紫馬肥しという名前からも容易に想像がつきますね。

 (アルファアルファ)

 

A白クローバー(別名:白詰草) 赤クローバー(赤詰草) 共にヨーロッパ〜アジアが原産国

 

 皆様、よくご存知のクローバーです。お子様たちで人気な四つ葉のクローバーも、乳牛の飼料のひとつです。タンパク質・アミノ酸が豊富に含まれているので、良好な牧草となっています。また先程述べた様に、マメ科植物は土地の質を良くしてくれますが、クローバーもその例外ではありません。よって「牧草用兼土地改良方法の一助」として、頻繁に利用されています。

(赤クローバー)

(白クローバー)

 

 

 

 日本では、上記のマメ科牧草が、給餌されたり栽培されていますが、他にも、マキミドリ・ケレス・ネオタチワカバと言った品種もあります。

 

 

 日本で人気主流のイネ科・マメ科の牧草の品種を紹介させて頂きました。これでもほんの一部の種類です。世界各国(特にアメリカ・カナダ)でも、チモシーやアルファアルファといった上記の牧草が輸出目的などで大規模に栽培されいますが、上記以外の牧草品種も大いに栽培されたりしています。正に乳牛をはじめ馬などの動物を賄うため、世界中が力を尽くしています。
 これからも、乳牛の主食である牧草が更に、改良され多くの収穫あることを望みます。

 

 因みに、これまで述べてきた牧草全部全種およびその牧草系から生産されているペレット状飼料、ヘイキューブ(*1)などは、酪農用語では『粗飼料』と呼ばれており、牛の体格の基礎を造ります。それに対して、大麦・トウモロコシ・大豆などの穀物系の飼料を『濃厚飼料』と呼ばれます。

 

 牧草の粗飼料が、乳牛の主食(ご飯)であれば、穀物系の濃厚飼料は乳牛の副食(おかず)と言い換えれますかね。今度は、乳牛の副食、濃厚飼料を中心に紹介してゆきたいと思います。

 

*1.ヘイキューブ:マメ科牧草のアルファアルファを中心とした牧草を高温で蒸して乾燥させた固形状飼料です。高温で蒸し乾草させることによって、ビタミンなど栄養素の破壊を防ぐことを目的としています。牛のメイン中のメインである飼料のひとつです。馬の主食やウサギのエサのひとつとしても重宝されたりしています。

(ヘイキューブ)

乳牛の副食・濃厚飼料の役割

 先程まで乳牛の牧草(酪農用語:粗飼料)の紹介をしてまいりましたが、ここからは、「濃厚飼料」についてです。酪農界では、濃厚飼料は、粗飼料の対として位置付けられています。
 日本では、明治時代から近代酪農技術が導入されて以来、より早く乳牛を肥育させ、より多くの乳量を得るがために牛の品種改良などが多く行われてきており、それを実現させました。その実現ためには、主食の牧草から得られる栄養だけでは不十分であったため飼料にも改良開発が行われ、より栄養価が高い飼料が誕生しました。それが穀物系を中心とした濃厚飼料です。
 我々人間(特に日本人)も、明治時代以降、米麦・魚介中心の主食生活に肉食を副食(西洋風)が導入される様になってから筋肉・体格が徐々に大きくなった事実がありますが、乳牛にも主食の牧草に、高タンパク質・高カロリーを誇る副食の濃厚飼料を導入することに拠って、牛を早く肥育させ、より多くの牛乳を得ることが可能になりました。少し故事付けの気もしますが、濃厚飼料は、正に乳牛の貴重で日々欠かせない副食(おかず)と言えると思います。

 

 その乳牛の副食?というべき濃厚飼料は、以下の通りの飼料があります。先に述べた通り、穀物系の飼料中心となっております。なっております。また現在では、圧縮加工したペレット状にして、様々な穀物飼料を配合された飼料が多くあり、場合によっては、「配合飼料」と呼ばれるときもあります。

 

@コーン(別名:メイズ、トウモロコシ)
 我々人間にとっても馴染みが深い食べ物であるトウモロコシは、濃厚飼料の王道と言うべき存在です。世界各国の全収穫量の64%が乳牛等の家畜用として利用されています。(それに対し、食用は4%にしか過ぎません)
 濃厚飼料用のトウモロコシは、我々人間が食用として有名な品種スイートコーンではなく、『デントコーン』という品種が利用されています。デントコーンはスイートコーンに比べて、実が大きく固いです。茎の部分は、サイレージ飼料として活用され、実の部分は、乾燥加工しフレーク状飼料として活用されます。正に乳牛用の「コーンフレーク」であります。
 デントコーンは、我々人間が食べても決して美味しいものではありません。強いて言うなれば、トウモロコシでん粉(コーンスターチ)やコーン油として食用に利用されます。

 

(デントコーンの穂) 
デントコーン。乳牛・肉牛・馬・羊など全家畜の飼料用として幅広く利用されています。*決して人が食べても美味しくないです!

 


こちらは、皆様よくご存知のスイートコーンです。デントコーンに比べると柔らかくて美味しいです。

 

A大麦
 麦飯や日本の夏の風物詩の1つである麦茶の原料である大麦もトウモロコシと並んで、濃厚飼料の貴重な原料の一つです。保存状態および乳牛の採食(食べやすさ・消化吸収)を良くするため、実を乾燥加工し圧篇状にして給餌するのが主となっています。
 
(大麦の穂)

(こちらが乾草圧縮加工された大麦。通称:大麦圧ペン)

 

B大豆
 こちらも我々人間の食卓に馴染みが深い食品ですが、濃厚飼料としては、きな粉・圧ペン状・大豆油粕として利用されます。高タンパク質ですので、家畜の肉質を高めることに効果があります。トウモロコシが本格的に伝来する(明治時代)以前より、牛・馬の貴重な飼料の一つですが、狂牛病(BSE)問題が勃発し、肉骨粉などの飼料規制が行われている以後も、タンパク質飼料としての重要性が増しています。

 

Cふすま(一般ふすま)
 家屋にある襖ではありません。小麦粉を製粉する際に出る、小麦の皮を原料として粉末状した飼料です(見た目は、きな粉に似ています)。繊維質・粗脂肪・ミネラルが多いので飼料としても高く評価されています。食べやすく、嗜好性も高いので、乳牛・馬などは喜んで食べます。余談ですが、芳ばしい匂いがあり、乳牛たちがあまりにも美味しそうに食べるので、確か高校時代でしたか、作業中に筆者もつまみ食いをしてみましたが無味でした。ふすまには、その様な面妖な思い出があります。

 

 他にも、油粕やビール粕、何と綿の実と言った物も濃厚飼料として利用されます。乳牛は、牧草などの粗飼料よりも濃厚飼料の方が好きで、もしそれらを同時あげると、粗飼料を残し、濃厚飼料を食べるという選り食いをします。人間で例えるならば、ご飯を残して美味しい肉(おかず)だけ食べるということになります。そういう状況になると、人間は胃もたれを起こす事がありますが、乳牛にも同じ事が言えるのです。高タンパク質の濃厚飼料を中心に給餌をすると、胃腸病(酪農用語:ルーメンの異常発酵)を起こし、食欲不振になって乳量に悪影響を及ぼし、更に悪い状況では、蹄の中が炎症していまう蹄葉炎を発症していまう場合があります。その状況を防ぐためにも、粗飼料と濃厚飼料をバランス良く給餌することが、酪農家に要求される使命なのです
 また濃厚飼料は、お伝えした通り、穀物の多種が原料であり、我々人間との主食と同一ですので、将来、人の食糧と家畜飼料のバランス問題も更に深刻になる可能性が大いにあります。実際、穀物輸出大国アメリカでの不作に伴う穀物高騰なの慢性化などが表面化しています。今後もこれらの問題にも目が離せません。

乳牛の1日当たりの採食(食事)量

 乳牛の飼料の種類を紹介してまいりましたが、これらの多種の飼料を『1日当たりどれぐらい乳牛がどれぐらい食べているのか』
について少し紹介していきたいと思います。
 乳牛の飼料の給餌量は、その時の牛の体調・妊娠の有無・乳量を考慮して、牧草・穀物系の飼料配分が決められていますので、詳細説明は出来かねますので、ご了承下さいませ。

 

 

★乳牛の飼料メニュー(一例)★

 

@一番目:牧草(乾草やサイレージ)をたっぷり食べます。5kg以上は確実に食べます!牧草(繊維質)を最初に多く食べることによって、乳牛の胃袋、特に、反芻で重要な働きをする第一胃(ルーメン)の動きを活性化させます。そうすることに拠って、濃厚飼料などを食べても胃もたれなどの胃腸病の発生を防ぎます。レストランで言う、サラダなどの前菜(スターター)に当たるのですが、乳牛の場合、主食の牧草が前菜も担っている様な形となっています。

 

A二番目:牧草が原料とするキューブ状飼料(ヘイキューブ)・砂糖大根を原料としたペレット状飼料(ビートパルプ)の粗飼料をそれぞれ約1kg〜2kgを食べます。

 

B三番目:約30分以上時間を掛けて、@・Aをじっくりと食べた(咀嚼と言った方が正解)後、いよいよトウモロコシ・大麦・油粕などの濃厚飼料を食べて行きます。濃厚飼料の採食量ですが、妊娠の有無・乳量に拠って違いはありますが、1回当たり3kg、多い場合だと5kgの濃厚飼料を食べます。乳牛は、濃厚飼料が何よりも好きなので、一心不乱に食べます。乳牛の立場では、メインディシュになりますかね。

 

C四番目:ビタミン剤・カルシウム剤と言った添加飼料を食べます(食後のサプリメント時間)。乳牛は自分の血液を基に、多量の牛乳を生産するので、ビタミン・カルシウムといった栄養素をサプリメント(特別飼料)で補給します

 

D五番目:再び牧草を食べます。牛乳を沢山生産してくれている乳牛の場合だと、@〜Bの食事量では足りないことがありますので、新しい牧草2kg〜5kgを、間食で食べたりします

 

・飲み物:多量な飲み水。粗飼料・濃厚飼料は、乾燥した物なので、食べていると喉が渇く上、牛乳と生産すると体内の血液(水分)が減少するので、余計に飲み水が必要です。1日当たり50リットル以上の水を飲みます。夏だと約100リットル飲みます。

 

・おやつ:お塩(塩飴)。約5kgはある乳牛専用の塩飴を何日もかけて舐めて食べます。血液に必要な塩分やミネラルをしっかり補給するという意味もありますが、それ以前に乳牛は塩が大好物なのです。好きな時に何時でも、喜んで舐めています。

 

 以上、乳牛の飼料メニューでした。これは1回分のメニューで、このメニューを1日最低、朝夕2回給餌したりします。つまり粗飼料+濃厚飼料(@〜D)の1日当たりの通算飼料採食量は、最高で約32kg!凄まじい採食量です。
 これ程の多種多量の飼料をバランス良く採食することによって、大量の牛乳が生産されて、我々人間に恩恵を与えてくれていることを皆様には(牛乳を飲む際にも)、思い起こして頂ければ嬉しく思います。

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