乳用牛群検定とは?
「乳用牛群検定」とは何とも大仰な名前でありますが、酪農経営をやってゆく上では、大切な仕組みの1つとなっています。一般社団法人中央酪農会議の公式HP内のことば辞典(酪農専門用語紹介欄)に牛群検定の説明欄があり、解り易く説明されていますので、以下の如く転用させて頂きました。
「牛群検定とは、検定参加農家が飼養している経産牛の全頭について、日々発生している極めて多くのデータの中から『乳量、乳成分、体細胞数、飼料給与状況、飼料単価、乳価、繁殖記録等といったデータ』ことであり、毎月1回、検定員の立会のもとに牛個体ごとに記録し、これらを集計・分析して「検定成績表」として、農家に情報を戻しています。
検定成績を受け取った酪農家は、飼料給与の改善、搾乳衛生管理、繁殖管理、遺伝的改良といった生産全般にわたるチェックを行い、経営改善に役立てています。 また、優れたオス牛の選抜確保及び種雄牛の後代検定こうだいけんていを推進するもので、乳用牛改良の基盤事業となっています。 」(一般社団法人・中央酪農会議公式HPより)
上記の牛群検定の紹介文を更に解り易く要約すると以下の4つになります。これらは社団法人・家畜改良事業団の公式HP内に定期掲載されていた情報誌「LIAJ News」の第102号の海外情報欄にあった牛群検定についての記事に書かれてあります。
*牛群検定の4つ大きな役割
@出荷乳の管理:牛群検定の役割では、これが最重要と言うべき項目になります。検定を行う事によって、飼育している全ての経産牛が産出する生乳の量や脂肪・体細胞数・細菌数などの乳質も全て詳細に判るので、『乳量や乳質を管理するためには牛群検定を行うのが最適』と生産者や産業獣医師の間では言われています。
A乳用牛の改良:文字通り、今後も飼育してゆくであろう経産牛の能力向上(改良)に役立てるための能力情報を得る役割があります。
B各牛の個体管理:経産牛の妊娠・分娩の繁殖状況やその成績情報を得る事によって、繁殖成績が悪い場合は給餌内容や方法を改良してゆく役割も担っています。
C酪農経営管理:上記の@・Bの情報を得る事によって、各経産牛の産出乳量などの詳細情報を得る事によって、「優秀な経産牛の系列は残し、活躍しない乳牛の系列は後々淘汰してゆく」という判断材料が入手できる上、「産出乳量が多い経産牛には給餌量を多くする」という情報も手元に入って来るので、今後の酪農経営方針の組み立てに貴重な役割を果たします。
つまり牛群検定を一言で述べるなら、『乳牛の能力検定・その詳細情報収集システム』の様な物と言えます。そして、その詳細情報を得て、酪農経営者は今後の酪農の道標を考え、はじき出してゆく事になるのです。正に牛群検定は、経営学でいう『棚卸システム』の1つと言っても過言ではないでしょう。
今度機会があれば、牛群検定の方法や流れを説明させて頂きたいと思っております。
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