乳用牛の肉利用

 広大な国土を持つ米国や豪国は、多種多頭の肉用牛を国内で飼う事ができるのに比べ、国土狭い日本ではそれも叶いません。現在では牛肉有名ブランドの松坂(三重)・神戸・但馬(兵庫)・飛騨(岐阜)の和牛が』有名ですが、国内の全牛肉生産量では、ごく一部に過ぎません。
 近代酪農が我が国で始まったとされる明治時代初期は、当時牛乳生産のみに優れた良ホルスタイン種より、良質な牛乳と牛肉が両方を生産可能な英国原産の乳肉兼用のエアシャー種の方が国内(主に政府)では注目されていました。
 時代が下り、日本酪農ではエアシャー種の台頭は実現せず、対してはホルスタイン種の乳用と肉用方面の改良が大いに進み、日本酪農・食肉業では不可欠な存在になりました。現在でもホルスタイン種(乳牛)から生産される牛肉は、日本の牛肉生産の中で非常に大きな役割を果たしています。
 1975(昭和50)年頃から、日本国内で乳用牛肉が食用として本格的に普及し始めました。その要因として、乳用仔牛の肥育技術が発達したからです。そして、1982(同57)年には、日本の牛枝肉総生産量の70%を占めるまでになりました。農林水産省が統計した食肉流通統計(平成27年7月現在)によると、牛枝肉の総生産量は約4万2千tありますが、その内、乳用牛からの枝肉生産量は、約1万2千tであり、総枝肉生産量の28%を占めている事になります。82年の乳用枝肉生産量より後退はしていますが、それでも現在の国産肉産業でも、乳用牛からの肉生産は大きな一助になっています。

 

 乳用牛肉は、ブランドで肉牛ブランドで有名な和牛に比べて肥育の歩合が早く、体重も大きいため、肥育期間が短縮でき、枝肉重量が大きい利点があります。しかし一方、肉中の脂肪含有量が少ないので、肉質等級が低くなり、市場では安価に取引されています。つまり乳用牛肉の欠点しては、筋肉質過ぎて、肉がパサパサしてしまうという事です。元来乳牛の肉質が脂肪が少ないという事もありますが、それ以上に毎日牛乳を泌乳するのは、自分の血液を生贄としています。これは乳牛が毎日運動し汗を掻いていていると同じ事なので、自然肉も脂肪が少なくなり、硬くなってしまうのです。しかし、この欠点を逆に長所に変える事によって、以前より乳牛肉を生産してきています。安価で脂肪が少ないので、『健康的で安い大衆向け肉』として、現在でも役立っており、主にレトルトカレー肉・牛丼や精肉のミンチ、食べ放題焼肉、そしてペットフードとして大衆向けに乳牛肉は大いに利用されています。
 乳牛は、主に日々産出してくれる牛乳によって、我々の食生活を彩ってくれていますが、普段何気なく我々が食している、経済的な牛肉料理(ハンバーグや牛丼)でも乳牛は、しっかりと役立ってくれているのです。高価なブランド和牛の霜降牛肉にも良い点が多々ある事は確かなのですが、「我々一般人の普段の肉食生活の支えているのは、実は乳牛の肉であるという事」を願い、今記事を終わりたいと思います。

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