牛の4つの胃袋、実はその内3つは胃袋ではなかった?
牛の胃袋と個数
「牛の胃袋は4つある」とお聞きになられた方やご存知な方は沢山いらっしゃると思います。
そこで早速ですが、牛の胃袋の呼称は以下の通りとなり、牛の全体重の約15%も占める重量を誇っています。
1.第一胃(ルーメン):酪農界では、ルーメンが通称です。なんとその大きさ、約150リットル(一般家庭用浴槽の満量)にも相当する大容量を誇り、胃袋の80%の規模を占めています。もはや貯蔵庫の規模です。牛が食した飼料を分解発酵させる微生物や真菌が多く生存しております。焼肉料理で使わるミノ肉は、この第一胃の肉になります。
2.第二胃(蜂の巣胃):文字通り2番目の胃袋となります。大きさは、全胃袋の約5%と言うわれ、第一胃と比べて遥に小さいですが、牛の重要な生態行動の1つである、一食した物をまた口に戻し、牛に咀嚼させる行為、『反芻(はんすう)』を行う大事な役割を担っています。第一胃が貯蔵庫に例えると、第二胃はポンプだと言えるかもしれません。焼肉料理のハチノスは、この第二胃の肉になります。
3.第三胃(葉胃):全胃袋の約7%の大きさです。第一胃・第二胃で、細やかに発酵分解された飼料を、より細かく分解し、水分を除去した上で、第四胃に運搬する役目を担っています。余計な物を排除するフィルター・運搬通路を兼ねていると言えるでしょう。鉄分たっぷりのセンマイ肉は、第三胃の肉になります。
4.第四胃(しわ胃):全胃袋の7%の大きさです。前記の3つの胃袋を経て、分解発酵した飼料が、漸くこの第四胃で胃液によって消化され、小腸にゆき栄養として吸収されます。この最後の胃袋こそ、規模の大きさは違いますが、我々人間が持つ胃袋と同じ役目を担っているのです。ホルモン焼きの主流というべき、ギアラは第四胃の肉になります。
食道が変化してできた3つの胃袋
胃袋として説明させて頂いた4つの内臓物・・・。豆知識として覚えて頂ければ嬉しいのですが、実は「厳密」に言えば、その内の3つは胃袋ではないのです。
第一胃〜第三胃の原形は「胃」ではなく『食道が変形・進化したもの』なのです(何とも巨大な食道と思ってしまいます)。つまり最初から胃袋と呼べるのは、我々人間の胃袋と同じ働きを持つ、第四胃のみであります。因みに、同様な胃袋構造を持つ動物に、羊・山羊・キリン・鹿などがいます。
第一胃〜第三胃は、牛を更に大きく成長させ、質の良い牛乳を沢山生産させるために、牧草・穀物などの飼料から得られる栄養素を、無駄なく吸収を助ける機関のようなものなのです。この様な優れた成長補助機関を有しているからこそ、あれほどの大きな身体をして、牛乳や肉を生産してくれる事が出来るのです。
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