ビールも飼料の1つ!
今記事は、ビール(麦酒)と飼料について述べさせて頂きたいと思います。読者の皆様の中にも、もしかしたらビール好きな方もいらしゃるかもしれませんが、白状すると筆者もそのビール好きの1人でございまして、夏の暑い1日が終わった時やお風呂上りに、冷えたビールを飲むと、何とも言えない爽快感があります。以前、確かキリンラガービールのCMで、女優の菅野美穂さんが、「人生は苦い、そう、まるでこのビールの様に」という名台詞をCM内で言っておられましたが、この程良い?苦味と炭酸成分の爽快感を同時に味わえるビールは、正に「大人に許された嗜みの1つ(大袈裟に言えば、特権)」です。
実は、この世界各地の大人に、格別な想いと一緒に愛飲されているビール、家畜動物(肉牛など産肉動物)の貴重な飼料ともなっており、近年でも生産者の方々の間では、飼料の1つとして採用されている事が増えています。
紀元前4000年前には既に誕生していた伝わるビールが、初めて飼料として利用したのは、日本人の誰もが知る和牛ブランド「松坂牛」を肥育していた三重県の和牛農家さんである事が定説になっています。それ以来、有名な話ですが、、現在の松坂牛の肥育牧場では、定期的にビールを飼料として給与しているそうです。また、ビール自体を給餌している訳ではありませんが、豚・羊などと言った肥育産業でも、ビール製造過程で排出される粕、通称:ビール粕を、他の飼料と混合して給餌している農家さんがいらっしゃいます。その一例として、筆者の知り合いの長野県の羊農家さんは、ビール粕を羊に給餌している場合もあります。
ビールを和牛に、与え始めた時期・経緯などの詳細は色々と諸説があり、(筆者の勉強不足もありますが)、はっきりした事は不明となっています。しかし、「ビールを飼料として肉牛に与える」という事を、最初に考案した方の発想や着眼点は、とても素晴らしいと、筆者は思っています。ビールは周知の通り、麦芽(大麦発芽)を、ビール酵母で発酵された飲料ですが、原料の大麦は、食物繊維やビタミンが豊富に含まれ、牛を含む家畜動物の必要不可欠飼料ですし、酵母で発酵醸造されている点でも、納豆や味噌、ヨーグルトなどと同様に、胃腸環境を整える効用があり健康的です。以上の利点に則った上で、ビールを飼料して、最初に考案した方は素晴らしいと申し上げました。
『肉牛にビールを飲ませると、牛肉の品質が良くなるのか?』という疑問をネット検索上で見かけますが、これは全部間違いではありませんが、ビールに含まれる成分が、直に肉牛の肉質に好影響を与えている訳ではありません。酵母発酵されたビールを、牛に飲ませる事によって、第一胃(ルーメン)に生息する微生物の発酵活動をより活性化させ、牛本体の食欲を、更に増進させる役割を果たしています。つまり一言で言うなれば『食欲増進剤』となりますかね。他の粗飼料や濃厚飼料の食い付きがより良くなり、結果的に、より質量が優れている牛肉を産出するようになったという事であります。これがビールと牛肉の品質向上効果の本質であります。
食肉品質の優劣は、何と言っても、飼料の食べる量や給与バランスが基盤になってきますので、食肉を産出してくれる牛・豚・羊などが、ビールまたはビール粕を給餌する事によって、肉牛たち産肉動物の食欲が増進するのであれば、何とも有難い存在であります。
近年では、乳用牛にもビール粕を飼料として利用を推奨している動きが、各地で見られます。(実は以前、「ビールによって生乳成分が変質するのではないか?」という疑念が、酪農家さんたちの間で持たれ、ビール系飼料が敬遠されていた感があり、ビール系飼料は、乳用牛には給餌さえていなかったそうです)
今回は「ビール」を飼料の1つとして紹介させて頂きました。その中で、ビール粕について少し触れさせて頂きましたが、ビールの製造過程で出る物であり、現在では家畜飼料として転用されていますが、その他にも豆腐粕や酒粕等と言った、我々人間が普段から飲食する物から抽出される『食品製造副産物』も、家畜動物の発酵飼料として活用されています。次回は、この『食品製造副産物=発酵飼料』について紹介させて頂きたいと思っております。