典型的実験動物の1つ・ミニブタ
ミニブタ(ミニチュア・ピッグ)は、成熟しても殆どが体重100kg以下の小柄体型であり、見た目が愛らしい上、食用豚より断然飼育が容易なので、米国を中心に、愛玩動物として有名です。ミニブタのルーツと用途を辿ってゆくと、東南アジア・中国は、在来種・野生化の小型豚の産地の1つであり、特にベトナムに生息していた小型豚を欧米で改良したのが起源となりますが、本来のミニブタ作出目的は「実験用動物」でした。
薬品試用や解剖などの実験に利用される生物は、テンジクネズミ(通称:モルモット)が一般的によく知られていますが、豚は解剖・生理学的に人の類以性が高いために、中世から医学分野の実験動物として利用されてきました。西洋のルネサンス期の芸術家・レオナルド・ダ・ヴィンチも豚の解剖図を描き遺しています。
ミニブタが作出される以前は、食用で飼育されていた仔豚が利用されていましたが、1960年以降、食用豚より繁殖・飼育が容易なミニブタが作出された以降、より精度が高い実験が可能になりました。
以上の如く、実験や愛玩動物として、我々に役立ってくれているミニブタの品種を以下の如く紹介させて頂きます。
@シンクレアー・ミニブタ
別名ホーメル・ミニブタとも呼ばれます。1954年に米国中西部に位置するミネソタ州に所在するミネソタ大ホーメル医療研究所で改良された実験用ミニブタ第1号になります。米国3州とグアム島の其々に生息していた4種の野生豚を交雑させる事によって作出されました。主に白色で、成熟時平均体重は約65kgとなります。
Aユカタン・ミニブタ
1960年、中米のメキシコ湾とカリブ海の間にあるユカタン半島に生息していた小型在来豚を礎にして、米国コロラド大学ボルダー校で作出された品種になります。このミニブタの特徴は、毛が殆ど生えておらず、種類も体重50kg未満のミニ種と30kg未満のミクロ種の2種に分類されている事です。世界規模で実験動物の飼育・販売を行っているチャールス・リバー社が保有し販売しています。
Bポット・ベリー・ミニブタ
この種類は実験動物としてではなく、ペットとして米国で作出されたミニブタになります。ポット・ベリー(potbelly)とは、太鼓腹、更に砕けた表現ではビール腹という意味ですが、その腹形を持つ小型在来豚が1960年頃ベトナムからカナダに導入され、その子孫が1986年に米国に輸出され、ペット販売され現在に至っています。
実験用目的ではなく、ペット用として販売されるようになった理由として言われてるのが、有色種で耳が小さく、耳からの採血が難しい上、体型がアンバランスなので実験用して不適でありましたが、それが却って愛嬌がある外見として大衆受けして、ペット動物として人気を得た事です。日本でもペットブタとして人気が出始めています。毛色は黒または黒白斑点が多く、平均体重は約50kg。
Cゲッチンゲン・ミニブタ
名前が長いこのミニブタですが、日本の体表的なミニブタ種になります。上記3つの品種が米国で作出されたのに対し、1960年始めにドイツのニーダーザクセン州にあるゲッティンゲン大学で作出された種類になります。余談ですが、この大学は、日本近代農業の礎を築いたお雇い外国人農業博士・W・クラークの留学先でもあります。
ホーメル系ブタとベトナムの在来種を交雑させ、更には繁殖能力を高めるために、ドイツランドレース種の血も導入する事によって誕生しました。毛色は白、平均体重は約40kg。
他にもムーア種・クラウン種など以外にも多くの種類のミニブタが存在しています。また機会があれば、他のミニブタも紹介させて頂きます。