近世のニワトリの種類
前回の記事内(ニワトリの起源と伝播)でも少し述べさせて頂きましたが、ニワトリを採卵用や肉食用品種に改良していたのは古代ローマ人でした。彼らは紀元前350年頃から鶏卵と鶏肉を盛んに食していたと事が伝わっており、その食文化とニワトリが西洋諸国に潮が拡がる様に、地中海諸国に伝わりました。この流行は5世紀頃まで続いたと言われていますが、5世紀中期になると古代ローマ人(帝国)の衰退が始まったのが原因となり、古代ローマ人の手によるニワトリの飼育や品種改良・各地への伝播は頭打ちになりました。しかし完全に西洋諸国でニワトリの飼育・改良が完全に止まってしまったというのではありません。
1869年当時にイギリス国内で飼育されていた主なニワトリの肉用・採卵品種として、「1世紀種」「ゲーム種(英国産)」「マレー種(マレーシア原産)」「コーチン種(別名:上海種、中国原産)」「スペイン種(スペイン・ベルギー産)」「レグホーン種(イタリア原産)」が挙げられますが、古代ローマ時代より時代が大きく下っても尚、イギリス国内でも上記の様に多種のニワトリが飼育されていた事がわかります。中でもコーチンは日本国内でも「名古屋コーチン」として一般的にも有名な卵肉兼用ニワトリ品種となっています。
採卵用のニワトリの種類
我々の日々の食卓、ひいては和洋を問わずスイーツデザートに必要不可欠な『鶏卵』を産んでくれる採卵用ニワトリの種類について紹介してゆきたいと思います。
一言で『鶏卵』と言っても、皆様もスーパーなどで販売されている鶏卵をご覧になればお判りになりますが、「白色玉子」と「赤色(褐色)玉子」の2種があります。白色の卵を産むニワトリを『白玉系ニワトリ』、赤色の卵を産むニワトリを『赤玉系ニワトリ』と学識上分類されています。
『白玉系』のニワトリで一番有名であるのが、『白色レグホーン』です。イタリアトスカーナ州にある港町・リヴォルノ特産のニワトリであり、スペイン種と共に地中海沿岸種とも呼ばれます。1858年に米国へ輸出されて以来、国内では民間育種業者によって更なる育種改良が行われ、1868年には米国からイギリスへ輸出されています。先述の米国での育種改良の結果、産卵能力にとても優れた種類となり、年間平均産卵個数は約280〜290個となっていますので、現在でも世界的に最も普及している白玉系ニワトリであり、日本国内の鶏卵の8割以上がこの白色レグホーン種の卵となっています。因みにレグホーンという名前は港町・リヴォルノ(Livorno)を英語名レガーン(Leghorn)をローマ字読みした事に由来しています。
他に白玉系としては、黒色ミノルカ種(スペインのミノルカ島原産)がいます。大卵を産む事で有名ですが、産卵能力が低いので、現在では鶏卵用というより観賞用として利用されている場合が多いです。
次に『赤玉系』のニワトリの主な種類として『プリマスロック種』が挙げられます。プリマスロック種は「白色」と「黄斑」が特に有名であり、共に米国原産鶏卵種になります。先ず最初に開発されたのは黄斑の方であり、1869年の米国で出品されたのが初公式記録となっています。灰色ドミニーク種(原産:ドミニカ)の雄ニワトリとアジアから輸入された黒色コーチン雌を交配させて作られた品種となっています。その後も品種改良が続けられ。産卵能力が高く、1羽当たりの年間産卵個数は約250個となっています。因みにこの品種改良の過程において、黄斑種の突然変異として誕生したのが白色プリマスロックとなり、1888年に公認されています。しかし白色種は、産卵用というより肉用として品種改良されてゆきましたので、産卵能力も黄斑種比べて低く、年間産卵量は約150個となっています。他の赤玉系ニワトリの品種として、ロードアイランドレッド種(米国産)・ニューハンプシア種(米国産)が存在します。
以上の様に、赤玉系ニワトリの原産国は米国が占めていますが、その大きな理由としては歴史を辿ればわかります。古代より西ヨーロッパの人々が飼育していたニワトリが褐色の卵を産む品種であったので、白色卵を好まない傾向がありました。そのため米国に初期移民した人々(英国人など西ヨーロッパ人)が赤褐色卵を産む品種ばかりを米国に持ち込み飼育したのが起因となっています。何とも単純な理由なのであります。
次は肉用ニワトリについて紹介させて頂きます。