馬の競技の王道・『競馬』
馬や犬などの動物を使う競技を『アニマルスポーツ』と一般的に呼ばれていますが、その中でも有史以来、馬を利用した競技は多々あります。今回はその一部を今回紹介させて頂いたいと思っております。
馬を使う競技(スポーツ)と訊かれれば、先ず『競馬』を答える方が多いのではないでしょうか。日本国内でも日本中央競馬会(JRA)や地方競馬場の主催でよく競技が開催されて、観客は馬のゴールの着順位を予想する賭博として人気を博しています。世界でも人気の競技の1つであり、特に近代競馬の発祥地の英国、その属国であったオーストラリアでは最早伝統的なスポーツの1つとなっています。オーストラリアに至っては、ビクトリア州の首都メルボルンにて、毎年11月第一火曜日に開催される競馬『メルボルン・カップ』当日には、ビクトリア州は祝日となり、他の州でも半日公休になります。そして、現地の皆様は、競馬場やテレビで一生懸命で競技を観戦するのです。「競馬(賭博)のための休日」とは、何とも我々日本人から見れば面白い物です。文化の違いとしか言い様ありません。因みに、競馬休日があるのは、広い世界の中でもオーストラリアのみであります。
日本では、競馬はどうしても「賭博」というイメージが付き纏ってしまいがちですが、古代、人間が馬の家畜化に成功して以来始められた歴史ある競技です。我々が現在観たりする競馬は「近代競馬」と呼ばれる物で、1665年に英国・ニュー・マーケットで始まり、17世紀以降は当時英国をはじめとする西洋諸国の属国であったアジア・アフリカ諸国、米国やオーストラリアの世界各地に拡散されていきました。日本で最初に近代競馬が開始されたのは、1860(万延元)年に横浜本村(現・元町商店街付近)で開催された洋式競馬だと伝えられています。そして、1866(慶応2)には、江戸幕府によって横浜根岸に国内初の公営競馬場(現・根岸競馬記念公苑)も設立されています(JRA公式HPより)。それ以降も、明治政府が日本陸軍騎兵の兵力強化(馬匹改良)を目的を周囲に認知させるために競馬を奨励していった事も日本近代競馬の定着の要因になっています。
上記の如く日本に近代競馬が誕生定着したのは江戸幕末頃ですが、日本特有の競馬も古来より存在しており、書き方は現在と同じ競馬となりますが、『くらべ馬』と呼ばれていました。しかし賭け事で定着している近代競馬とは違い、日本古代競馬は、神に奉納する神事祭礼や宮廷内で行う儀式を目的として行われていました。また武士が台頭してきた鎌倉時代頃になると武道の一環としてもくらべ馬は行われる様になりました。
馬神事の最も古い記録で701(大宝元)年に朝廷内の端午の節句(現在のこどもの日)の儀礼の1つとして、くらべ馬が行われた事があります。この名残りとして、堀河天皇の治世1093(寛治7)年以来、現在も毎年5月5日に開催される京都賀茂神社の馬神事・賀茂くらべ馬があります。
近代競馬を見ていると、場内のトラック内を走り廻る競技のみのイメージがありますが、競技の種類として5つに分類されます。
@襲歩(ギャロップ・馬が最速で走る)競技の『平地競技』:これが最も典型的な競技となり、テレビなどで見かける競馬はこの平地競技になります。
A襲歩で障害物を飛び越える競技の『障害競走』
B速歩(トロット・常足と駆足の中間の速さ)で走る競馬・『騎乗速歩競走』:現在日本国内では行われていない競技ですが、以前は函館や島根などの地方競馬場で開催されていました。海外ではフランスやベルギーで人気の競馬競技となっています。
C騎手が競走馬の後に繋駕車に乗り速歩で、平地を走る競技・『繋駕速歩競走』:発祥は、古代西洋の戦車競走となります。映画「ベン・ハー」に登場する戦車競走はこの部類に入ります。現在でも米国・オーストラリアなどで盛んに行われている競技になります。一方日本では、大正時代に戦場車両を曳く軍馬育成のために奨励され流行りましたが、現在は相当縮小され、北海道の道東で一般向けに開催されている程度で競技人口も極めて少なく、「日本一競技人口の少ないスポーツ」という異名を持つとも言われています。
D競走馬がソリを曳きながら速力を競うレース・『ばんえい競馬』:北海道帯広市が主催する世界唯一の特殊な競馬となります。Cの繋駕式と似ている様に見えますが、違う点はCが競走馬(中型馬)が曳くのは車であり、平坦地を走るのに対し、ばんえい競馬は、『重種(大型)馬がソリを曳き、走るのは平坦地のみではく、2か所の障害物(小型台形の丘)を走る』という事です。
日本古代くらべ馬・現代競馬は、元々外国(古代中国大陸や英国)から導入された物ですが、ばんえい競馬は、丘陵地や山地が多い日本だからこぞ発展した独特の競馬文化であると筆者は思います。
以上、今記事では馬を利用した競技を中心に紹介させて頂きましたが、次回は「馬を利用した伝統行事など」を中心に紹介してゆきたいと思っております。
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